「時の回廊」に寄せて


私は「時」の自在なる姿、
過去、現在、未来を統べる
その遥かなる奥行きに畏怖し、
同時に様々なものを観ます。

実用的な人生のインデックスであり、
無垢なる仕事であり、
そして、霊長、森羅万象の生と死を司る
ゆるぎの無い存在としての、時。
それは、同じ瞬間も時代も
一つとして無い意味において、
深々と心に余韻を残す出会いのような
ものであるのかもしれません。           
 
2003.May 玉貴

   
叡智  

 

一滴、また一滴
浸透する気付きの雫
宇宙に在るものと
生命の持つものを
ゆっくりと照合していく

潤む心は螺旋の力を招き入れ
記憶のようなものを彷彿させる
全身の細胞が星を喚び、共に瞬くから
高揚した脳は悟るだろう
(ただ、生きよう)

せつない命を捧げて
時の器に、瑞々しい叡智と出会った証の
朱印を施そう
そして、連なり行く生命の輪の陰に
そっと置いておこう

   
   
ひととき(開放)  
 

時を渡ろう
身体をカラに、心を熱し
ありったけのナンセンスで頭を膨らませ
宙に溶ければ、あとは簡単

闇を、陽を、まずはなぞろう
それから雲を、山を、街を
次第に見下ろして、涙しよう

そうしたら、もう
そばには時しか居なくって
それすら終わりが近くって
渡り終えたら帰ろう
小さな、ちいさな人間に

   
   
水鏡  
 

うっかりしてた、戻らなきゃ
もう、こちらがあちらを映しにかかってる
虚像と現実の、交代のサイン

哀しいことは楽しいことに
晴れた空は雨に濡れて
一切を無から問い直すように
嘘も真実も心のままに映すから
私はこの、時の無い世界で禊をする

そうして、すっかり優しくなって
忘れていたことも想い出して
水鏡の向こうに待つ
愛しい人々のところに
繰り返し、逢いに戻るのだ

   
   
背負い  

 

 
何故、あなたは'それ'を背負うのか
そこにある云い知れぬ想いが
かわし切れぬ約束が
頑強な柱をあなたに立てるのか

束になった時は心の臓で結ばれ
あなたは命の彫像のように美しい
きらきらと廻る問いかけさえも
掲げてみせて奮い立つから
きっと、知ることは無いのだろう
あなたは、独りなのだ
   
   
古い声  
 

遠く、遥か遠くから
古い、極めて古い声が
時の波紋を従え、厳かに迫り来る
何(誰)とも判らず、聴かずとも抗えど
それは心の真芯に到達し
湧いたように、その深淵に滲んでみせる

さながら、生きるを掌握し
在るがままに時を手放し続けること(者)への
追憶、さもなければ同情だろう

確かに、我等には過ぎ行く時に身を委ね
消え行く日を迎える義務があり
その先に在るかもしれない世界には
気が遠くなるほど古い声々が
帰還を称え、出迎えるのだろうから

   
   
誕生  
 

分子の壁に守られて
生気の源は色づいている
(さあ、何を創ろうか)
果たして私は設定された
号令一つ、
後は出来上がるのを待つばかり

けれど、生まれるってどういうこと?
はみ出して、ひとりになるってこと?
(外の世界はどんなだろう)
私みたいなモノでもういっぱい?
それでも、私は必要?

いいじゃない。だって、私は創られた
もう、電気だって流れてるし
次元の渦はつぎで三つ目を数えるから
そろそろ、色々忘れなくっちゃね
それじゃあ、さようなら

 
 
 


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